2017 年 16 巻 1 号 p. 7-18
水田転換畑における地下水位制御システム(FOEAS:Farm-Oriented Enhancing Aquatic System)の灌漑機能の活用を想定し,ブロッコリーの異なる生育時期および降水量下における地下灌漑の有効性を明らかにした.雨よけハウス下で2種類の土壌(黒ボク土と灰色低地土)を詰めた大型ポットを用いて試験した.地下灌漑処理は,付設タンクの水位を地表下–30 cmに設定して自動で給水した.夏播き秋どりブロッコリーの本圃生育期間の前期,中期,後期および全期間に少雨条件下(平年並み降水量の25%相当の地表灌水量)でそれぞれ地下灌漑処理を行った.地下灌漑なし・地表灌水量25%区と比較すると,地下灌漑処理によって土壌水分吸引圧が低く維持され,ブロッコリーの成長が旺盛となった.両土壌とも中期および全期間に地下灌漑を行った場合,平年並み降水量相当の地表灌水を行った場合と同程度の花蕾重が得られた.一方,地表灌水量によって地下灌漑の効果が異なり,平年並み降水量相当の地表灌水下では両土壌とも地下灌漑により花蕾重の減少,日持ち日数の短縮がみられた.従って,夏播き秋どりブロッコリー栽培において,生育時期や降雨条件に応じて地下灌漑を実施することによって干害を回避し,収量と品質を向上できると考えられた.