2017 年 16 巻 2 号 p. 125-130
サギソウが自生地で実生から生育するには,昆虫により受粉し(自然受粉),多くの種子が形成されることが必要である.そこで,愛知県内のあるサギソウ自生地を供試自生地とし,自然受粉による種子形成状況を調査したところ,自生地で形成されるサギソウのさく果結実率と種子発芽率は年次によって変動した.この要因を検討したところ,サギソウの栄養状態が種子発芽率に及ぼす影響は認められず,供試自生地に飛来する媒介昆虫の関与が推察された.また,受粉時の開花後日数によって形成されるさく果の結実率および種子の発芽率は大きく異なることが明らかとなり,開花後4~5日目の開花中期に受粉して形成されたさく果の結実率と種子の発芽率が高くなった.このことから,サギソウは開花後4~5日目に最も生理的受粉態勢が整い,この時期に昆虫が受粉を媒介して形成されたさく果の種子発芽率は高くなることが示唆された.