園芸学研究
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栽培管理・作型
補光による明期延長が中玉トマト ‘シンディスイート’ の尻腐れ果発生および果実中のCa濃度に及ぼす影響
大山 光男吉田 裕一Tran Duy Vinh田中 義行安場 健一郎後藤 丹十郎
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2017 年 16 巻 3 号 p. 279-286

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抄録

秋作において補光で明期を約16時間に延長することにより長日条件がトマト果実中の水溶性Ca濃度と尻腐れの発生に及ぼす影響を調査した.中玉トマト ‘シンディスイート’を用い,園試処方のCa/K比のみを変更した低Ca濃度(1/4Ca, 1/8Ca)培養液を給液した.400 Wメタルハライドランプ2灯により草冠で60~168 μmol・m–2・s–1(PPFD)の範囲で補光を行った結果,非補光区に比べて補光区で尻腐れ果の割合が顕著に増加し,正常果率は低下した.果実中の水溶性Ca濃度と全Ca濃度はいずれも補光により低下した.果実の肥大速度に補光の有無による差異は認められなかったが,葉の気孔コンダクタンスと補光強度との間には正の相関関係が確認された.つまり,日没後も補光期間中は葉からの蒸散が継続し,木部導管を通じた果実へのCa転流が抑制されたと考えられる.以上のことから,晩春から盛夏期には,高温と強日射による果実肥大速度の上昇とCa要求量増大に加えて短い暗期が木部導管流による果実へのCa転流を抑制することも尻腐れ果発生率を高める大きな要因の一つと考えられた.

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