園芸学研究
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16 巻, 3 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 寺本 さゆり, 二宮 隆徳, 山本 雅史
    2017 年 16 巻 3 号 p. 239-248
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    ‘シークー’(Citrus sp.)は,奄美群島に位置する喜界島で栽培されているベルガモット香を備える在来カンキツ品種であり,同様のカンキツは奄美群島北部のみに見いだされる.この‘シークー’果皮から抽出できるベルガモット香について,同様の香りを備える‘ベルガモット’(C. bergamia Risso et Piet.)および‘田中ベルガモット’(C. balotina Poit. et Turp.)を対照として香気成分を分析した.その結果,主要香気成分である酢酸リナリル,リナロールおよびリモネンが,すべての供試材料で77%から91%を占め,成分構成が相似であることが判明した.また,‘シークー’には‘ベルガモット’において光感作作用を起こすフロクマリン類がほとんど含有されていなかった.‘シークー’は果実が小さくフラベド部分が薄いことから,水蒸気蒸留法による精油製造に適していることが示唆された.Sequence-related amplified polymorphism(SRAP)分析の結果,‘ベルガモット’と‘シークー’は直接の遺伝的関係はなく,‘シークー’は奄美群島北部で偶発実生として発生した在来カンキツであると推察された.

  • 柳本 裕子, 金好 純子, 古田 貴音
    2017 年 16 巻 3 号 p. 249-257
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    コルヒチン処理により得られた5品種・系統の2x-4x-4x倍数性キメラおよび9品種・系統の四倍体について,花粉の形態的特性と倍数性を調査した.供試した2x-4x-4x倍数性キメラおよび四倍体のすべての品種・系統で,花粉粒が二倍体よりも有意に大きく,11品種・系統で花粉稔性が低かった.このことより,花粉粒の大きさは,二倍体と明確に識別できる特性であることが示唆された.また,7品種・系統の2x-4x-4x倍数性キメラおよび9品種・系統の四倍体について,果実形質と組織別倍数性の調査を行った.調査したすべての四倍体で果皮が二倍体よりも厚かったが,2x-4x-4x倍数性キメラでは,品種・系統によって傾向は異なった.フローサイトメーターによる倍数性の分析では,2x-4x-4x倍数性キメラ果実の組織別倍数性は,供試した7品種・系統とも,フラベド,じょうのう膜,砂じょうで二倍性と四倍性の2つのピークを,アルベドでは四倍性のピークのみを示した.花粉は,2x-4x-4x倍数性キメラと四倍体はいずれも二倍性と四倍性の2つのピークを示した.2x-4x-4x倍数性キメラおよび四倍体を種子親とし,二倍体‘大橘’を花粉親とした交配によって得られた実生は三倍体であり,四倍体と同様に,2x-4x-4x倍数性キメラは三倍体を作出する育種親として有効であることを明らかにした.

  • 長澤 正士, 原 加寿子, 柴田 雄喜, 小野 早人
    2017 年 16 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    秋田県果樹試験場天王分場で1991~1998年に交雑された正逆交雑を区別した26家系の各6つの子(合計156の子)の果重の2006~2009年の4年間のうちいずれか1年の調査データを場内に植栽されている17品種について各1樹から10果を採取し5年間(2003年,2006~2009年)の平均値により年次補正し,果重の解析を行った.その結果,平均親値をX,近交係数をF,子の家系平均値をYFとすると重回帰式(YF = 0.9902 + 0.6263X – 0.7343F)が得られ,平均親値除去後の近交係数および近交係数除去後の平均親値はともに1%水準で有意であった.

    次に,平均親値と近交係数から子の家系平均値をこの重回帰式で予測し,それを平均値として子の遺伝子型値が家系内遺伝分散と回帰では説明できない分散の和で正規分布するモデルにより①早生種を想定し,平均親値300 gの家系から果重350 g以上,②中晩生種を想定し,平均親値500 gの家系から果重500 g以上の子の出現率を推定した.①については,近交係数(F) = 0.1094の時23.6%,F = 0.3438の時1.3%であった.②については,F = 0.1094の時19.5%,F = 0.3438の時0.9%であった.

    本検討の結果,少なくとも果重が育種目標となっている場合は,平均親値だけではなく近交係数を考慮した交雑を行う必要があると考えられた.

  • 上西 愛子, 聖代橋 史佳, 菊池 真司, 木庭 卓人, 吉田 誠, 北 宜裕
    2017 年 16 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    アブラナ科アブラナ属コマツナ(B. rapa L. Perviridis Group)とキバナスズシロ属ルッコラ(E. sativa Mill.)を属間交雑し,胚珠培養により交雑個体を得た.得られた交雑個体の表現型のうち,花序や葉身は両種の中間型,胎座の配列はコマツナ型,茎生葉の基部の形状はルッコラ型を示した.GISH法によりコマツナおよびルッコラ由来の染色体が明確に識別されたことから,この交雑個体は両種の雑種であることが確認された.また,この交雑個体はルッコラ由来の機能性成分エルシン前駆体(4-methylthiobutyl-GSL: Glucoerucin)およびスルフォラファン前駆体(4-methylsulfinylbutyl-GSL: Glucoraphanin) も含有していたことから,今後,消費者ニーズに応えられる付加価値の高い新規軟弱野菜品種の育成につながるものと期待される.

土壌管理・施肥・灌水
  • 竹岡 賢二, 福島 啓吾, 伊藤 純樹, 毛利 晃
    2017 年 16 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    発泡ガラスの園芸用培地としての利用可能性を明らかにするため,粒径別の理化学性およびコマツナの栽培特性を調査した.有効水分は,粒径4 mm未満で確保でき,4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合すると制御できた.発泡ガラスの化学性は,pHおよび交換性マグネシウムが高く,CECが低かった.発泡ガラスを流水洗浄することで交換性マグネシウムは低下したが,pHは調整が必要であった.コマツナの生育および窒素吸収量から,発泡ガラス培地は,pHを6に調整するとマサ土とバーク堆肥を混合した慣行培地と同程度の生育を示したが,ゼオライトの添加による生育差は見られなかった.以上のことから,発泡ガラスは,粒径4 mm未満に4~15 mmを25~75%混合し,pHを6に調整することで,園芸用培地として利用できる可能性が示唆された.

栽培管理・作型
  • 大山 光男, 吉田 裕一, Tran Duy Vinh, 田中 義行, 安場 健一郎, 後藤 丹十郎
    2017 年 16 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    秋作において補光で明期を約16時間に延長することにより長日条件がトマト果実中の水溶性Ca濃度と尻腐れの発生に及ぼす影響を調査した.中玉トマト ‘シンディスイート’を用い,園試処方のCa/K比のみを変更した低Ca濃度(1/4Ca, 1/8Ca)培養液を給液した.400 Wメタルハライドランプ2灯により草冠で60~168 μmol・m–2・s–1(PPFD)の範囲で補光を行った結果,非補光区に比べて補光区で尻腐れ果の割合が顕著に増加し,正常果率は低下した.果実中の水溶性Ca濃度と全Ca濃度はいずれも補光により低下した.果実の肥大速度に補光の有無による差異は認められなかったが,葉の気孔コンダクタンスと補光強度との間には正の相関関係が確認された.つまり,日没後も補光期間中は葉からの蒸散が継続し,木部導管を通じた果実へのCa転流が抑制されたと考えられる.以上のことから,晩春から盛夏期には,高温と強日射による果実肥大速度の上昇とCa要求量増大に加えて短い暗期が木部導管流による果実へのCa転流を抑制することも尻腐れ果発生率を高める大きな要因の一つと考えられた.

  • 笈田 幸治, 松井 元子, 大場 将生, 村元 由佳利, 大谷 貴美子, 本杉 日野
    2017 年 16 巻 3 号 p. 287-293
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    ブドウ‘シャインマスカット’は皮ごと食べるブドウとして販売されているが,その食べやすさは無核化処理や灌水などの栽培条件によって異なる.皮ごと食べやすさを向上させるため,満開期における25 ppm GA3に加用するCPPU処理濃度の違いが,果粒の物性,剥皮厚および皮ごと食べたときの官能評価に及ぼす影響について検討した.試験区としてCPPUの無処理,2 ppm,5 ppmおよび10 ppm区の4試験区を設定した.果粒の物性分析の結果,無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,5 ppmおよび10 ppm区では無処理および2 ppm区よりも初めの嚙みきり時に果粒の歪みが大きく,咀しゃく中の皮切れが悪い品質であると評価された.また,果粒の剥皮厚は無処理と2 ppm区との間に差はみられなかったが,処理濃度が高くなるに従って大きくなった.果粒を皮ごと食べたときの官能評価の結果,10 ppm区での評価は他の試験区に比べて低く,これは物性分析の結果と一致していた.また,5 ppm区では10 ppm区ほど大きな差はなかったが,無処理および2 ppm区よりも官能評価は低い傾向がみられた.以上のことから,満開期におけるCPPUの5 ppmおよび10 ppm濃度処理は‘シャインマスカット’果粒の皮ごと食べやすさを大きく損なうことが明らかとなった.

  • 村松 嘉幸, 窪田 聡, 腰岡 政二
    2017 年 16 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    冬季に加温を必要とするインパチェンスの生育・開花とエネルギー消費量に及ぼす根域加温の影響について検討した.最低気温と根域温度をそれぞれ13°C/無加温,8°C/無加温,8°C/13°C,8°C/18°Cに設定した4区を設け,根域環境制御システム(RECS)を用いてインパチェンスを2014年2月1日から4月22日まで栽培した.葉数,葉面積,地上部の乾物重,花数は8°C/18°C区で最も多くなった.葉面積および地上部乾物重は平均根域温度が高くなるほど増加し,生育と平均根域温度の間には極めて高い相関関係が認められた.開花時期は13°C/無加温区と比べると,8°C/13°C区と8°C/18°C区において約10日間促進された.生育と開花が最も促進された8°C/18°C区の消費電力量は13°C/無加温区よりも32%削減された.

  • 渡 萌恵, 池浦 博美, 柘植 一希, 元木 悟
    2017 年 16 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    ヒユ科のビート(Beta vulgaris L.)は,ベタレインと呼ばれる優れた抗酸化能を有する色素を豊富に含む.しかし,日本国内において,異なる品種のベタレイン含量を検討した研究はほとんど見当たらない.また,ビートは一般に肥大根の直径が5~6 cm程度で収穫されるが,市場流通における出荷規格はほとんど決まっておらず,またベタレイン含量が最も多い収穫期に関する情報もほとんどない.そこで本研究では,肥大根の色が異なる4品種のビート, ‘デトロイト・ダークレッド’, ‘サフランイエロー’,‘ゴルゴ’および‘リボルタ’を用い,ベタレイン含量の品種間差異を検討するとともに,異なる6つの生育ステージにおけるレッドビート (‘デトロイト・ダークレッド’)のベタレイン含量の変化を調べた.その結果,ベタレイン含量はレッドビート‘デトロイト・ダークレッド’が最も多かった.また,レッドビート‘デトロイト・ダークレッド’における新鮮重当たりのベタレイン含量は,肥大根の直径が5~6 cm程度の収穫適期が最も多く,その時期がベタレインを効率的に摂取するのに適した収穫期であると判断された.

  • 白山 竜次, 木戸 君枝
    2017 年 16 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    キクにおける効果的な電照栽培技術を確立するためには,どの時間帯にどれぐらいの長さで光照射を行えば最も効果が高いかについて明らかにする必要がある.そこで,暗期開始から効果の高い電照時間帯までの時間(Dusk-NBmax),電照時間帯および電照の長さと花芽分化抑制効果の関係を秋ギク‘神馬’および夏秋ギク‘岩の白扇’を用いて検討した.‘神馬’および‘岩の白扇’のDusk-NBmaxは,それぞれ10時間15~25分および7.5~8時間であった.電照の時間帯は,両品種ともに,Dusk-NBmaxの0.5~1時間後を終点として前に延長する方法が効果が高かった.電照の長さは,両品種ともに,電照時間を長くすると効果が高くなったが,一定時間以上長くすると逆に効果が低下した.長時間電照による効果の低下については,明期終了から電照開始までの暗期の有無が関与している可能性が考えられた.以上の結果をふまえて,実用的に花芽分化抑制効果の高い電照時間帯は,秋ギク‘神馬’および夏秋ギク‘岩の白扇’ともに概ね暗期開始4時間後から,品種固有のDusk-NBmax + 0.5~1時間までの範囲であることを提示した.

  • 片山(池上) 礼子, 高居 恵愛, 島田 稜, 松田 賢一, 坂本 知昭
    2017 年 16 巻 3 号 p. 317-324
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    無核栽培における四倍体の赤色系ブドウ品種‘安芸クイーン’および‘ルビーロマン’に対する成熟後期(ベレゾーン25~40日後)でのABA含有肥料処理が着色と果実品質へ及ぼす影響を調査した.本処理がベレゾーン期処理の際に生じる深色化,糖度の低下を発生させずにアントシアニン蓄積を増加させたことから,成熟後期におけるABA含有肥料処理の着色促進効果の有効性が確認された.本処理による着色促進効果は‘ルビーロマン’と比べ‘安芸クイーン’でより顕著に現れた.アントシアニンの蓄積およびその生合成に関わる転写調節因子VlMybA1-2およびVlMybA1-3と生合成酵素UFGTの遺伝子発現パターンを経時的に調査したところ,品種間差異がみられた.すなわち,‘ルビーロマン’は,‘安芸クイーン’と比較してこれらの遺伝子発現が成熟後期において高く推移しておりアントシアニンをより蓄積しやすい品種であることが示唆された.

新技術
  • 川口 岳芳, 房尾 一宏, 尾崎 行生
    2017 年 16 巻 3 号 p. 325-331
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    ワケギ鱗茎を種球として利用するための慣行貯蔵方法である軒下吊り下げ貯蔵において,春季に掘り上げて年末の定植に利用可能な鱗茎割合の向上を目的とし,貯蔵中の遮光処理が鱗茎の品質に及ぼす影響を調査した.軒下吊り下げ貯蔵中のワケギ鱗茎では,8月中旬頃に自発休眠および他発休眠が打破され,CO2交換速度の増加と重量の減少が見られ始め,9月上旬から急激に軟化の発生が増加した.貯蔵中の遮光処理は,慣行貯蔵と比較して8月中旬以降の鱗茎の呼吸速度の増加および乾物での全糖含有率の低下を抑制した.これにより,最終定植時期となる年末における鱗茎重量の減少を無処理と比較して約10%,軟化鱗茎の発生を約20%それぞれ抑制し,定植可能な鱗茎が20%増加した.

  • 村上 覚, 山口 和希
    2017 年 16 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,‘レインボーレッド’において受粉時の花粉量を削減することを目的とし,受粉方法,摘蕾程度および花粉の希釈倍率について検討した.その結果,受粉方法では充電式花粉交配器の利用が使用花粉量と作業時間が少なく,有効な受粉方法であると考えられた.摘蕾では受粉時の花数が結果枝当たり2~3花であれば,奇形果の発生や収穫量に影響することなく花粉量を削減することが期待できた.粉末受粉区の花粉希釈倍率は,10~20倍までは結実率,果実品質,種子数に差はなかったため,20倍まで希釈できる可能性が示唆された.以上の結果,使用花粉量は,慣行の200倍希釈溶液受粉区と比較して,充電式花粉交配器に切り替えること,受粉時の花数を結果枝当たり2~3花とすることで削減効果が見込まれた.また,粉末受粉における花粉の希釈倍率は10~20倍までは結実率,果実品質,種子数に差はなかった.今後は,これらの技術を組み合わせていくことで,花粉の使用量が少ない有効な受粉技術を形成していけると考えられた.

  • 中嶋 香織, 市ノ木山 浩道, 長岡(中薗) 栄子, 岩波 徹
    2017 年 16 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    ウンシュウミカンにおいて,茎頂接ぎ木法によるHSVd,CDVd,CVd-VI除去のための新梢伸長中の温度条件の影響について検討した.3種類のウイロイドに感染したウンシュウミカン‘みえ紀南3号’樹を,40°Cと25°Cを4時間ごとに繰り返す断続熱処理と28°C一定の定温区の2種類の温度条件下で生育させた.茎頂接ぎ木は,各温度条件下で成長させた新梢から摘出した0.2 mmの長さの茎頂を用いた.温度条件に関係なくCDVd除去が最も簡単であり,引き続いてCVd-VI,HSVdの順となった.茎頂接ぎ木が活着した個体中の各ウイロイドの除去率は,断続熱処理区が高くなった.しかしながら,各処理区間においてカイ2乗独立性検定で有意な差が認められなかったため,断続熱処理の併用は必要ないことがわかった.0.2 mm茎頂接ぎ木は,ウンシュウミカンのHSVd,CDVd,CVd-VI3種混合感染したウイロイド除去の効果的な方法であることが示された.

新品種
  • 登島 早紀, 岡本(中村) 理恵, 阿部 健一, 坂嵜 潮, 小松 春喜, 國武 久登
    2017 年 16 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー

    温暖な日本の気候に適し,健康機能性を有するラズベリー品種の作出のため,環境適応性の高い在来野生種ナワシロイチゴ(Rubus parvifolius L.)とラズベリー‘インディアンサマー’(R. idaeus L.)の種間交雑を行った.葉,花および果実の形態的調査において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示し,RAPD分析によるDNA評価でも雑種性が確認された.‘07RUBIXP01’は小さな刺が見られるものの,暖地環境下でも旺盛な生育を示し,両親に比べ果実重が有意に高いことが確認された.総ポリフェノール,アントシアニンおよびエラジタンニン含量測定において,‘07RUBIXP01’は両親の中間的な値を示した.特にエラジタンニン含量において‘インディアンサマー’と比べ約4倍高い値を示した.さらに,糖と有機酸含量の測定では,両親に比べ糖酸比が高く,食味に優れていた.2012年に‘07RUBIXP01’として品種登録し(農林水産省品種登録第21801号),今後日本の温暖地域において有望なラズベリー品種として期待できる.

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