8月上旬出荷の小ギク生産では近年,開花期の年次変動と開花期間の長さが問題となっている.そこで,開花期の年次安定性と開花斉一性の向上を目的に,8月上旬咲きの新品種‘春日の紅’を育成した.‘春日の紅’は無加温ハウスと露地における開花日の差が5日以内となることを条件に選抜された.2010~2013年の4か年に露地条件とハウス条件で栽培した‘春日の紅’は,年次と栽培条件によらず概ね8月上旬に開花した.10,15,20および25°Cの一定温度で栽培した場合,‘春日の紅’は対照品種の‘広島紅’よりも10~15°Cで展葉が遅く,花芽分化しにくい特徴が見られた.また,栄養成長期から生殖成長期のうち2週間における±3.5°Cの温度処理が,開花に及ぼす影響を調査した.栄養成長期では,対照品種‘広島紅’に比べてより高い17~25°Cの温度域で,高温ほど花芽分化節数が少なくなった.生殖成長期では,対照品種と同じ22~29°Cの範囲で高温ほど開花が遅延したが,その遅延程度は小さかった.また開花斉一性について,‘春日の紅’は8月2~5日の開花盛期の開花茎率が高く,開花始めから開花終わりまでの期間も短かった.