2020 年 19 巻 3 号 p. 219-228
地球温暖化の進行に伴い,近年モモやカンカオウトウなどのサクラ属果樹の栽培において,様々な障害が発生している.また今後の発生が予想されるものもある.主なものとして,休眠芽の低温遭遇量の不足による発芽不良,花芽分化期の高温による奇形果の発生,開花期の高温や夏秋季の貯蔵養分蓄積阻害による結実性の低下,果実発育期の高温や多雨による果実の生理障害,秋冬季の気温上昇に伴う耐凍性の低下による若木の凍害などがある.それぞれについて,発生機構の解明のための研究が各地で行われてきた.その知見をもとに,障害を軽減するための栽培技術による対処法が検討されてきた.また,育種による対応も進められてきた.今後も更なる気温上昇が予想されることから,これらの研究の一層の進展が望まれる.