園芸学研究
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作物保護
二酸化チタン光触媒を利用した殺菌装置による水耕トマト根腐れ病の抑制効果
Prommart Koohakan池田 英男草刈 眞一曽田 孝雄真野 和人増田 竜司
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2003 年 2 巻 3 号 p. 215-219

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抄録

二酸化チタン光触媒を利用した培養液殺菌装置を開発し,その効果を検討した.フザリウム菌では100 literの,ピシウム菌では30 literの水道水に,それぞれ別に培養した分生胞子あるいは遊走子を懸濁し,5~20 liter・min−1の流速で殺菌装置を通過させて殺菌効果を検討したところ,前者ではいずれの流速でも分生胞子の発芽率は速やかに低下し,処理開始10分後には50%の,また60分後には約90%の発芽阻害率となった.しかし,後者ではその程度は流速によって異なり,遊走子の90%の発芽抑制が認められたのは,流速5,10 liter· min1でそれぞれ10分,60分後であった.
ピシウム菌を接種した培養液で育てると,トマト苗は処理2日後にはほぼ90%が,3日後には全個体が発病した.しかし,培養液を殺菌装置を通過させると,処理3日後では発病率は25%以下であり,全個体が発病するのは処理5~6日後と遅れ,殺菌装置による発病遅延効果が認められた.
培養液を殺菌装置で処理した場合,トマト苗に鉄欠乏様の黄化が発生し,二酸化チタン膜が褐色となった.培養液中の重金属濃度を測定したところ,鉄と亜鉛の急速な濃度低下が認められたことから,二酸化チタン光触媒を培養液殺菌に利用する場合には,これらの欠乏症の対策が必要と考えた.

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© 2003 園芸学会
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