二酸化チタン光触媒を利用した培養液殺菌装置を開発し,その効果を検討した.フザリウム菌では100 literの,ピシウム菌では30 literの水道水に,それぞれ別に培養した分生胞子あるいは遊走子を懸濁し,5~20 liter・min−1の流速で殺菌装置を通過させて殺菌効果を検討したところ,前者ではいずれの流速でも分生胞子の発芽率は速やかに低下し,処理開始10分後には50%の,また60分後には約90%の発芽阻害率となった.しかし,後者ではその程度は流速によって異なり,遊走子の90%の発芽抑制が認められたのは,流速5,10 liter· min−1でそれぞれ10分,60分後であった.
ピシウム菌を接種した培養液で育てると,トマト苗は処理2日後にはほぼ90%が,3日後には全個体が発病した.しかし,培養液を殺菌装置を通過させると,処理3日後では発病率は25%以下であり,全個体が発病するのは処理5~6日後と遅れ,殺菌装置による発病遅延効果が認められた.
培養液を殺菌装置で処理した場合,トマト苗に鉄欠乏様の黄化が発生し,二酸化チタン膜が褐色となった.培養液中の重金属濃度を測定したところ,鉄と亜鉛の急速な濃度低下が認められたことから,二酸化チタン光触媒を培養液殺菌に利用する場合には,これらの欠乏症の対策が必要と考えた.