抄録
リンゴ‘ふじ’の臭化メチルくん蒸処理による果実内褐変の発生を調べた.その結果,臭化メチル濃度を38 g・m−3,48 g・m−3 および58 g・m−3 と変えてくん蒸処理した後に通気し,0 ℃7日間と15 ℃10日間の密閉貯蔵を行ったところ,果心内褐変がわずかに発生し,密閉容器内の二酸化炭素濃度は臭化メチルのくん蒸処理濃度が高いほど高くなった.果実を入れた密閉容器に21 g・m−3の臭化メチルを注入し,15℃で10日間貯蔵したところ,すべての果実で褐変が発生した.この結果から,臭化メチルのくん蒸処理濃度にかかわらず,処理直後の通気が果実内褐変の軽減に有効であることが明らかになった.容器内の酸素濃度はやや減少したものの,二酸化炭素濃度の上昇が著しかった.滴定酸度と,リンゴ酸含量が有意に低下した.以上の結果,臭化メチルは呼吸に関わる有機酸代謝に影響を及ぼしていると考えられた.