園芸学研究
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栽培管理・作型
昼温および夜温がイチゴ ‘さがほのか’ の13C-光合成産物の転流・分配に及ぼす影響
田川 愛江原 愛美伊藤 優佑荒木 卓哉尾崎 行生宍戸 良洋
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2021 年 20 巻 1 号 p. 95-100

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抄録

温度制御により果実への転流を促進する方法を開発するため,イチゴ‘さがほのか’の第一次腋果房頂果開花時および開花32日後において安定同位体13Cを施与し,昼温および夜温が光合成産物の転流・分配に及ぼす影響について検討した.開花32日後の時間当たりの転流率は,昼の時間帯において昼高温区が昼低温区の2倍以上の値で有意に高かった.これに対し夜の時間帯において,夜高温区と夜低温区の間には有意差が認められなかった.このことから夜に比べて気温が高い昼の環境が転流すなわち果実肥大に及ぼす影響が大きくなると考えられた.開花時および開花32日後の13CO2施与24時間後における13C-光合成産物の分配率を比較すると,開花時において新葉に最も多く分配されていたのに対し,開花32日後では果実への分配率が高く,昼高温区で90%以上,昼低温区で70%以上となった.開花32日後の昼高温区においては,第1果への分配率が高く,これは昼高温で第1果の果実肥大が進んだことによると考えられた.開花32日後における果実乾物重は,昼高温区が昼低温区より有意に大きく,昼の高温が果実の発育を促進したと考えられた.第一次腋果房頂果の成熟日数は,昼低温区において昼高温区より長くなったが,夜間の温度は影響を及ぼさず,日平均温度より昼の温度の影響が大きかった.以上の結果から,厳寒期の施設イチゴにおいて昼の温度を高めることは,光合成産物の果実への転流および成熟を促進する効果があることが明らかとなり,気象条件や草勢に応じてイチゴの生育をコントロールする方法のひとつとして活用できると考えられた.

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