園芸学研究
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育種・遺伝資源
カンキツ加工適性品種育成のために重視すべき形質およびその選抜基準
太田 智河野 恵伸別所 英男野中 圭介吉岡 照高
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2021 年 20 巻 2 号 p. 131-142

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抄録

近年の果実加工品の需要拡大に際して,我々はカンキツ加工適正品種の育成を開始した.そのため,加工に適する果実形質を理解する必要があった.カンキツ加工品を製造する実需者18社にアンケート調査を行ったところ,果実重,歩留り,種子数が加工において特に重要であることがわかった.それらの形質における許容範囲にはジャムやジュースなどの加工用途ごとに違いがみられたため,加工仕向け量の多いカットフルーツに焦点を当て,暫定の選抜基準を作成した.また,以前から問題と指摘されていた液だれ性(ドリップ)については,実需者アンケートの結果に基づいて暫定の選抜基準を作成するとともに,関連が認められる果実形質を調査した.その後,実需者3社への聞き取り調査,および二次選抜中の系統への適用を行った.以上の結果から,選抜基準を以下のとおり決定した.一次選抜では,従来どおりの形質調査を行い,果実重180 g以上,種子数3粒以下,果汁量「少」および「中」,および肉質「中」から「硬」の個体を選抜する.二次選抜では,新品種候補を選抜するために,果肉歩合および液だれ性の調査を追加して行い,果実重200 g以上,種子数3粒以下,果肉歩合80%以上,液だれ性1.60 g以下(果実100 g当たり)であることを選抜基準にするのがよいと考えられた.

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