島根県に自生する日本固有の多年草,トウテイランとサンイントラノオ(オオバコ科クワガタソウ属)の遺伝資源活用と園芸化による絶滅危惧種保護を目的に2種間で種間雑種の作出を試みた.2種間の正逆交雑において,トウテイランを種子親に,サンイントラノオを花粉親にしたときのみ交雑種子が獲得でき,1交配当たりの種子獲得数の期待値は0.5粒であった.得られた種子から生育した個体をSRAP法によって雑種検定したところ,両親のバンドを受けついでおり,雑種性が確認された.両種とその種間雑種92個体の開花期における特性調査の結果,雑種個体の葉の大きさや茎,葉の毛量は両親の中間的な値を示し,花序長や開花期間などは両親より長かった.これらの観賞に関与する形質の遺伝性は,主成分分析によっても支持される結果が得られた.本研究の結果,観賞性に関与する形質に着目して選抜,育種を進めることで,より優れた品種の育成が可能と考えられた.