園芸学研究
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栽培管理・作型
マルチ栽培が ‘河内晩柑’ 果皮のオーラプテンおよびポリメトキシフラボン含量に及ぼす影響
井上 久雄菊地 毅洋越智 洋之
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2021 年 20 巻 4 号 p. 415-422

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抄録

9年生 ‘河内晩柑’ を供試し,透湿性シートを9~1月まで被覆して土壌乾燥処理を行い,果実品質, AURおよびPMF含量に及ぼす影響を調査した.果実肥大については処理間に有意な差は認められなかった.果皮色は,マルチ栽培区で12月以降a*値が高く推移した.果汁の糖度は,処理開始1か月後には処理区で有意に増加し,その後一貫して高く推移した.クエン酸含量は,マルチ栽培区で高く推移したが,4月以降処理間に明らかな差は見られなかった.果皮のAURは,処理区では10月までは無処理と差はなかったが,12月にかけて有意に増加し,3月まで無処理区とほぼ同じレベルで推移した.その後,4月に有意に増加して最大値を示した後,6月にかけて低下した.1果当たりのAUR含量は4月に最も高くなり,処理区で高かった.果汁のAURは,処理区では4月に有意に増加した.果皮のPMFについては,処理間に明らかな差は認められなかった.果皮の糖は,全糖および還元糖が処理区で10月に有意に増加した.以上のとおり,‘河内晩柑’ 果皮1果当たりのAUR含量は,4~5月に最も高くなることが明らかとなった.また,マルチ栽培により,果皮および果汁のAUR含量が増加する効果が認められ,これらの変化には乾燥ストレスや冬季の低温の影響が示唆された.

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