2022 年 21 巻 2 号 p. 137-147
ニホンナシの育種は農研機構および全国の県の試験場で行われている.育種において最も重要な形質は黒星病抵抗性であり,生理障害の発生少,収量性,早生性,高糖度,自家和合性なども重要な育種目標となっている.近年温暖地においてナシの発芽不良が問題となっているため,温暖地でも安定栽培可能な品種の開発が求められている.そのような中で,黒星病抵抗性,自家和合性,黒斑病抵抗性,早生性,果皮色についてはDNAマーカーが開発され現場の育種に利用可能となっている.しかしながら, これらの形質は遺伝の顕性と潜性 (優性と劣性),質的形質と量的形質,対立遺伝子に異なる複数の効果があるなどの特徴があるため,効率的な選抜のためにはそれぞれの形質の遺伝様式を十分に理解したうえでDNAマーカーを使う必要がある.本総説ではニホンナシの育種に重要な59品種のこれらの形質の表現型と遺伝子型データベースを公開し,それぞれの形質の遺伝様式と利用技術についてとりまとめ解説する.