2022 年 21 巻 4 号 p. 473-481
モモ ‘清水白桃’ において,収穫後の8月下旬および9月上旬の尿素200倍液の葉面散布が子房径の肥大および新葉の葉色などの翌年の初期生育ならびに結実率に及ぼす影響を検討した.葉面散布を行うことで,処理後のSPADによる葉色値が高く,さらに翌年の子房径が大きく,葉色値が高く,初期生育の促進効果が認められた.しかし,結実率に及ぼす影響は明らかでなかった.葉面散布由来の窒素成分の分配および利用を確認するため6年生のポット植え樹に15N標識尿素を該当期間に2回葉面散布したところ,処理後に葉から速やかに樹体内の各器官に転流し,12月には葉面散布で樹体に付着した窒素量の28.9%が樹体内の各器官に分配されていることが明らかとなった.特に,花芽,新梢および1年生枝などの新しい器官に高い比率で分配されることが確認された.翌年には,葉面散布由来の窒素成分が,新葉および幼果に,それぞれ3%程度利用されていることが明らかとなった.