園芸学研究
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21 巻, 4 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 松島 憲一, 伊藤 卓也, 北村 和也, 根本 和洋, 南 峰夫
    2022 年 21 巻 4 号 p. 391-399
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    日本産在来トウガラシ52品種を用いてRAPD法により多型解析を行いその類縁関係を解析した.その結果に基づくUPGMA法による系統樹ではI~Vの5つのクラスターに分類することができ,そのうちのクラスターIVは2つのサブクラスターに分けることができた.クラスターIおよびIIは京都の伏見系4品種と石川県の ‘剣崎なんばん’,クラスターIIIは上向き着果の香辛料用品種,クラスターIVのサブクラスターIV-aは観賞用開発良品種および果実色に特徴を有する品種で構成されたが,最大の品種数によって構成されたサブクラスターIV-bは雑多な品種群が混合して構成された.残るクラスターVはベル・ブロッキー型の大果品種によって構成された.以上の結果,大まかな日本の在来品種の類縁関係や遺伝的関係が明らかになり,その一部は文献などの史実と一致した.

  • 池田 みゆき, 小森 貞男, 國久 美由紀, 山本 俊哉, 村松 昇, 佐藤 守, 岡田 初彦, 和田 雅人, 田中 紀充, 渡邉 学
    2022 年 21 巻 4 号 p. 401-412
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    雌性側の単為生殖を誘導する方法としてγ線をはじめとする放射線を照射した花粉を授粉に用いる方法が実施されている.本研究では種子親に ‘ふじ’,‘紅玉’,‘印度’ を用いて,500 Gyのγ線を照射した ‘Golden Delicious’ の花粉を授粉に用いた場合の結果率や種子の状態を調査し,SSRマーカーを用いて獲得した種子から育成した実生の由来について調査した.試験の結果,γ線照射花粉の授粉によって獲得した実生から雌性側単為発生個体は獲得できなかったが,γ線照射花粉によって胚発生が誘導され成育途中の胚および種子のほとんどが退化することが推察された.多くの胚および種子の発育が停止する時期は6月下旬(交配後約50日)以前であり,単為発生由来個体を獲得するためにはそれ以前の時期に胚を救出し胚培養を行う必要があると推察された.雌性側単為発生個体を獲得するためにはγ線照射花粉の授粉によって結実する必要がある.今回用いた品種では ‘印度’ が高い結果率を示しており実験に適した品種と考えられた.一方,‘紅玉’ は結果率が低く,この実験には適さない可能性が考えられた.除雄操作によって自殖個体は確実に除かれたが,γ線照射花粉無除雄区で得られた自殖個体は100交配中1個体以下と少ないことから,除雄操作の手間を考慮した場合,無除雄で交配果数を多くし,実生育成後に遺伝子マーカーで選抜する手順が単為発生個体を獲得する方法として効率的と考えられた.γ線の線量が500 Gyでは一部の花粉は稔性を維持することが示されたが ‘GD’ のγ線照射花粉由来と考えられる個体は最大でも700交配中5個体とわずかであり,照射線量は500 Gyが妥当と考えられた.今後はγ花粉の花粉管伸長,受精および胚発生,胚発育の停止過程を明らかにし,胚培養による半数体由来個体獲得の可能性を探る必要がある.

  • 瀬戸 花香, 笹木 悟, 本多 和茂, 小森 貞男, 立澤 文見
    2022 年 21 巻 4 号 p. 413-423
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    サルビア・スプレンデンス(S. splendens Sellow ex Schult.)とサルビア・コクシネア(S. coccinea Buc’hoz ex Etl.)の園芸品種の合計9品種の花色と花弁に含まれるアントシアニンを調査した.‘フラメンコレッド’ と ‘アカプルコ’ は,花色の値が近い赤色系であり,主要花色素がいずれもペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-マロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシドであった.‘フラメンコレッド’,‘フラメンコローズ’ および ‘フラメンコサーモン’ におけるアントシアニンの化学構造を比較したところ,‘フラメンコローズ’ では ‘フラメンコレッド’ の主要アントシアニンのうちマロン酸2分子が結合したアシル化アントシアニン,‘フラメンコサーモン’ ではp-クマル酸が結合したアシル化アントシアニンが含まれておらず,また,含有アントシアニン濃度の低下も確認され,これらの要因が色調に影響している可能性が考えられた.‘フラメンコパープル’ と ‘フジプルコ’ では,花色の値はどちらも紫色系であったが,主要アントシアニンは異なっていた.‘フジプルコ’ の主要アントシアニンは,シアニジン3,5-ジグルコシド,ペラルゴニジン3,5-ジグルコシド,シアニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドと同定され,これら4種のアントシアニンは,サルビア・コクシネアの園芸品種の花弁に含まれるアントシアニンでは新たな報告となった.

土壌管理・施肥・灌水
  • 臼木 一英, 室 崇人
    2022 年 21 巻 4 号 p. 425-432
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    タマネギの直播栽培は移植栽培に比べて2週間程度生育期間が長いために気象条件の影響を受け易い.そこで,北海道十勝地域における窒素,カリウムの直下施肥と窒素とカリウムの分施を組み合わせについて実験年度の違いによる直播タマネギの生育と収量に及ぼす影響を調べた.また,上記の施肥方法の違いによる生育および収量について,試験年度の違いに及ぼす降雨による土壌水分の違いの影響を調査した.実験年度によって結果が異なり,生育に及ぼす窒素とカリウムの分施効果が降水量の影響を受けたと考えられた.その結果,施肥方法の違いがりん茎につながらなかった要因は,各実験年の養分吸収量の違いにより影響されたことと推測した.収穫時のりん茎重に影響を及ぼす肥大始期の葉面積を確保するためには6月下旬までの肥効が重要であり,肥効はこの時期の降雨の影響を強く受けることが示唆された.

  • 腰替 大地, 坂上 陽美, 阪本 大輔, 杉浦 裕義, 木﨑 賢哉, 内野 浩二, 杉浦 俊彦
    2022 年 21 巻 4 号 p. 433-440
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    近年の温暖化に伴い,九州などの暖地で,ニホンナシ露地栽培における発芽不良の発生が顕在化してきている.そこで本研究では,発芽不良の発生軽減が期待される春施肥の有効性を,‘豊水’ および ‘幸水’ において,5年間継続して検証した.両品種において,施肥時期を慣行の秋施肥から春施肥に変更することで,耐凍性が向上し,5年間安定して発芽不良の発生が軽減された.一方,9月と3月に分施する秋春施肥では,耐凍性の向上効果および発芽不良の軽減効果は見られなかった.なお,春施肥に変更したことによる果実品質への悪影響は認められなかった.以上のことから,凍害によるニホンナシの発芽不良発生の軽減策として,全量を春に施用する施肥法は,有効的かつ実用的なニホンナシ露地栽培技術であることが明らかになった.

栽培管理・作型
  • 岩崎 光徳
    2022 年 21 巻 4 号 p. 441-447
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    ウンシュウミカンの高品質果実生産には,樹体に乾燥ストレスを付与するシートマルチ栽培が用いられている.しかし,根域に雨水が流入しやすい園地の形状や,根が通路に伸長することで,十分な乾燥ストレスが付与されないケースが多くみられる.そこで,排水設計した園地において,専用のS.シートで植列を囲いシートマルチ栽培を行う,シールディング・マルチ栽培(S.マルチ)を開発した.本研究は,この技術の確立と有効性を検証した.まず,S.シートの規格を決定するため,幅の異なる2種類のS.シートを用いて3か年の果実品質から有効性を検証した.その結果,幅500 mmのS.シートを用いた処理区で毎年糖度の高い果実が生産されたことから,このサイズがS.マルチに適したシートと考えられた.次に,S.マルチによる樹体への乾燥ストレスと根域の土壌水分の影響について調査した.その結果,樹体の乾燥ストレス指標である葉内最大水ポテンシャルは,S.マルチ区で高品質果実生産に適正な–0.7~–1.0 MPaに制御できた.一方,慣行のマルチ区は–0.7 MPa以上の期間が長かったことから,十分な乾燥ストレスは付与されなかった.土壌水分は,細根が多く分布する20 cm深と根域下部に当たる40 cm深を測定したところ,両深さでS.マルチ区はマルチ区に比べて発育期間を通じて低く推移した.収穫時の果実品質は,S.マルチ区の果実がマルチ区に比べて高糖度で,やや高い酸度,やや小さい果実で果皮色は赤みが強かったことから,適度な乾燥ストレスが付与されたと示唆された.以上のことから,S.マルチは慣行のマルチ栽培に比べて根域の土壌が乾燥しやすく,樹体に乾燥ストレスが付与されることで高品質果実が安定して生産されると示唆された.

  • 香西 修志, 河崎 靖
    2022 年 21 巻 4 号 p. 449-457
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    ミニトマト生産における所得向上のためには,7月に定植し,9月~10月に一定の収量を得る栽培体系が有利である.そこで本研究では,高温期における群落内の温度上昇と高温障害を回避しつつ,光合成量の増加により多収化が可能となる新たな栽培体系を開発するため,栽培初期である夏季のみ密植にし,秋に摘心し冬に慣行の栽植密度に減らした場合のミニトマトへの影響を評価するとともに,光合成量が最大化する最適LAIと最適栽植密度の推定を行った.その結果,温室内環境は密植による蒸散量増加により温度の低下が確認できた.また,早期,全期間ともに,面積当たり収量は大幅に増加した.この要因としては,夏季において,LAIの増加に伴い光合成量が増加し,さらに面積当たりの着果数が増加したほか,裂果を中心とする障害果が減ったためと考えられた.また,日射量,群落内相対PPFD,光-光合成曲線からLAI別の積算光合成量を試算し,光合成量が最大化するLAIから最適栽植密度を推定したところ,夏季においては5.21株・m–2程度とし,秋以降は,日射量の減少に伴い栽植密度を夏季よりも低く管理することが望ましいと考えられた.以上より,密植により単価の高い9月~10月に高温の悪影響を緩和して多収化を達成し,所得向上が期待できる新たな栽培体系の可能性が示された.

  • 細野 達夫, 浅井 雅美, 西畑 秀次, 臼木 一英
    2022 年 21 巻 4 号 p. 459-466
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    冬季積雪地域である富山県砺波市および新潟県上越市で秋播き移植栽培したタマネギ ‘ターザン’ の抽苔株率データを用い,抽苔株率推定モデルについて検討した.タマネギの花芽形成に関する温度反応を積算したVD値,または日々の温度反応と葉数との積を積算したVDLN値について,積算期間を変えて抽苔株率との近似曲線への非線形回帰における決定係数を調査した.VDについては,いずれもの場合も決定係数が低く抽苔株率を高精度に推定することはできなかった.一方,植物体の大きさを加味したVDLNの決定係数については,砺波と上越の全データを用いた場合,1月20日まで,または移植後80日間の積算で0.75以上,砺波のデータのみを用いた場合は2月20日以降または移植後120日以降までの積算で概ね0.95以上と高かった.よって,VDLNを用いるモデルの有効性が示唆された.実用的な指標として,砺波において移植後140日までのVDLN > 490が ‘ターザン’ の抽苔可能性の目安として示された.

  • 加古 哲也, 持田 耕平, 郷原 優, 中務 明, 小林 伸雄
    2022 年 21 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    本邦固有の有用な遺伝資源である,トウテイラン(オオバコ科クワガタソウ属)の夏秋期出荷の鉢物生産方法の開発を目的に,摘心時期,摘心節位が開花時期ならびに生育に及ぼす影響について検討した.鉢物用 ‘NG-1’ を用いた実験の結果,摘心時期が遅い区ほど開花は遅くなった.一方,摘心時期が遅くなると到花までの積算温度は少なくなった.出荷期の生育は,摘心時期が遅くなると開花節位は低下し開花枝長は短くなった.高い節位で摘心を行った場合,開花は早く,到花までの積算温度は少なくなり,開花節位は低下し,開花枝長は短くなった.開花枝は,摘心時期や摘心節位にかかわらず増加した.一方,6月末の摘心,また,低節位での摘心では不開花枝も増加した.

    これらのことから,トウテイランの鉢物利用において,摘心時期ならびに摘心節位により鉢物生産における開花期や生育の制御が可能であることが明らかとなった.なお,5月末前後に基部から2~3節の直上で摘心することで敬老の日を目標とした9月上旬の鉢花出荷が可能であると考えられた.

  • 樋野 友之, 高田 大輔, 井上 博道, 安井 淑彦, 荒木 有朋, 藤井 雄一郎
    2022 年 21 巻 4 号 p. 473-481
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    モモ ‘清水白桃’ において,収穫後の8月下旬および9月上旬の尿素200倍液の葉面散布が子房径の肥大および新葉の葉色などの翌年の初期生育ならびに結実率に及ぼす影響を検討した.葉面散布を行うことで,処理後のSPADによる葉色値が高く,さらに翌年の子房径が大きく,葉色値が高く,初期生育の促進効果が認められた.しかし,結実率に及ぼす影響は明らかでなかった.葉面散布由来の窒素成分の分配および利用を確認するため6年生のポット植え樹に15N標識尿素を該当期間に2回葉面散布したところ,処理後に葉から速やかに樹体内の各器官に転流し,12月には葉面散布で樹体に付着した窒素量の28.9%が樹体内の各器官に分配されていることが明らかとなった.特に,花芽,新梢および1年生枝などの新しい器官に高い比率で分配されることが確認された.翌年には,葉面散布由来の窒素成分が,新葉および幼果に,それぞれ3%程度利用されていることが明らかとなった.

収穫後の貯蔵流通
  • 滝澤 理仁, 比留間 直也, 中野 龍平, 中崎 鉄也
    2022 年 21 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    アスパラガス(Asparagus officinalis L.)は収穫後の代謝活性が非常に高く,品質を維持するには低温条件で貯蔵することが非常に重要である.本研究では,通常の冷蔵庫では困難な低温かつ高湿度条件を作り出す高湿度冷蔵庫による貯蔵がアスパラガスの若茎の重量,伸長および品質に及ぼす影響を調査した.高湿度冷蔵庫と冷蔵庫でアスパラガスを貯蔵し,経時的にそれらの重量と長さを調査した結果,貯蔵11時間以降,冷蔵庫区より高湿度冷蔵庫区で,若茎の重量と長さの減少量は有意に小さくなり,高湿度冷蔵庫が貯蔵中の若茎の重量減少抑制に有効であることが明らかとなった.次に,各試験区における貯蔵が販売所での陳列・棚持ち期間中の若茎の品質に及ぼす影響を明らかにするため,各冷蔵方式により0~72時間貯蔵した若茎を冷蔵ショーケースで3日間水につけて保管し,保管後の若茎の品質を調査した.その結果,両試験区間に大きな差は認められなかったものの,高湿度冷蔵庫での貯蔵は若茎の急激な重量の増減を抑制したことから,収穫直後の効果的な短期冷蔵技術であると考えられた.また,高湿度区では貯蔵時間が長くなるにつれ,保管後の若茎の重量と伸長量の増加量が小さくなり,糖度が高くなることが判明した.これは低温下での貯蔵が若茎の代謝活性を抑制し,それが若茎の伸長を抑制したことに起因すると考えられた.本研究の結果から,アスパラガスの貯蔵における高湿度冷蔵庫の有用性が示されるとともに,低温下での貯蔵時間が保管後の若茎の品質に影響を与える可能性が示された.この成果はアスパラガスの貯蔵・出荷の体系を考える上での有用な知見となると考えられる.

  • 伊藤 秀和
    2022 年 21 巻 4 号 p. 491-499
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    ATR-MEMS-赤外分光法を用いたトマトおよびイチゴ汁液中総遊離糖含有量の迅速定量法を開発した.本法においてはトマトおよびイチゴ汁液は希釈せずに測定し,水のスペクトルを直接差し引かずに説明変数の少ない方法を目指した.併せて,糖水溶液では糖濃度を変えて測定した.赤外分光法と同様の振動分光法である近赤外分光法と異なり,糖の水溶液,トマトおよびイチゴ汁液を測定した赤外光吸収スペクトル上で,スペクトルの微分処理なしで糖の吸収帯を目視により確認できた.目的変数がトマトおよびイチゴ汁液中総遊離糖含有量の場合,他の成分による吸収を配慮すれば,それぞれ1032 cm–1,1000 cm–1の吸光度を説明変数として採用可能であった.トマトよりもイチゴで低波数側の吸光度が採用されたことは,イチゴの構成糖であるスクロースの吸収がグルコースとフルクトースに比べて低波数側にも存在することと対応する.また,トマトおよびイチゴにおいて,Bland-Altmanプロットは誤差の許容範囲(LOA)内にプロットされたことから,HPLCによる総遊離糖含有量の参照値とATR-MEMS-赤外分光法による総遊離糖含有量の定量値(説明変数は1つのみ)が同等であることを確認できた.

  • 黒島 学
    2022 年 21 巻 4 号 p. 501-506
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/31
    ジャーナル フリー

    デルフィニウム切り花において,収穫前の相対湿度,STS処理時の気温と相対湿度が,STS溶液の吸収量および切り花の銀含量に及ぼす影響について調査した.エラータム系品種を開花始めから収穫まで相対湿度条件が異なる人工気象室で保持し,収穫後STS処理した結果,なりゆき区(平均相対湿度 84.8%)の吸収量は,除湿区(平均相対湿度 59.4%)より多くなった.また,なりゆき区の気孔径は,除湿区よりも有意に増加した.STS処理を23°C-70%,23°C-80%,30°C-70%および30°C-80%条件で実施した結果,同一温度条件では,相対湿度が低いほど吸収量が増加した.開花始めから収穫までをなりゆき区(平均相対湿度 82.3%)と除湿区(平均相対湿度 65.1%)に保持し,収穫後それぞれの切り花を低湿度(平均相対湿度 62%) と高湿度(平均相対湿度 86%)でSTS処理し,STS溶液吸収量,銀含量への影響を調査した結果,収穫前に高湿度条件で保持し,低湿度条件下でSTS処理した切り花のSTS溶液吸収量および銀含量が最も増加した.一方,高湿度条件下でのSTS処理においては,収穫前の湿度条件の影響はみられなかった.

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