初秋の花芽分化期に低窒素栄養条件で成長させたイチゴは,正常な二出集散花序を形成する.しかし,‘愛ベリー’では高窒素栄養と高温によって花芽分化が抑制されると茎頂分裂組織が帯化する.ハウスやトンネル栽培では,様々な要因で雌ずいや花粉の稔性が低下するが,花粉媒介昆虫を利用することで正常な果実生産が可能となった.高窒素栄養条件下で花芽が発育すると,花床上の雌ずい列数が増加するため‘愛ベリー’では「先詰り果」や「先青(白)果」発生が増加する.また,施肥過剰やGA3処理などによって草勢が強くなりすぎると,花芽へのホウ素やカルシウムの転流が抑制され,がく片や新葉のチップバーンとともに「異常花」(‘宝交早生’),「受精不良果」(‘とちおとめ’・‘女峰’),「先絞り果」(‘さがほのか’)などが発生する.雌ずいの緑色化(「葉化」)はアジサイと同様にマイコプラズマ感染によって発生するが,雌ずいのがく片化はマイコプラズマではなく,雌ずい分化期の高温によって誘発される.「種浮き果」は果実肥大期のホウ素の転流不足,「頂部軟質果」については果実発育期の光合成産物不足によって発生すると考えられる.