抄録
カキ果実の果肉中のカロテノイド含量を増強するため,収穫後の貯蔵温度(10~25℃)がカロテノイド組成およびカロテノイド生合成関連酵素の遺伝子発現レベルに及ぼす影響について調査した.果肉に含まれる全てのカロテノイド類は,収穫後のどの貯蔵温度でも増加し,特にリコペンの増加は著しかった.25℃貯蔵では,カロテノイド生合成系の上流に位置するリコペン等のカロテン類だけでなく,下流に位置するβ-クリプトキサンチン等のキサントフィル類も増加した.また,生合成酵素のDK-LCYbやDK-HYbの遺伝子発現レベルも高く推移していた.このことから,貯蔵温度25℃はカロテノイド生合成が進みやすい条件であると考えられた.一方,10℃貯蔵では,カロテン類のみ増加し,DK-PSYやDK-ZDSの発現低下は少なく,DK-LcybやDK-Hybの発現が低下するため,リコペンの特異的な蓄積が起こったものと考えられた.また室温貯蔵では,両者の中間の傾向を示した.