2008 年 7 巻 1 号 p. 27-31
生存個体数が減少しつつあるサギソウ自生地を復活させる方法として有効な,菌根菌接種ゲル被覆サギソウプロトコーム設置法を自生地で実施する適期を検討した.サギソウの種子は播種時期によって発芽特性が異なった.10月播きの発芽率は照度0 lxで著しく低かったが,照度200 lx以上では高かった.一方,翌年の5月播きでは,照度による発芽率に明らかな違いは認められなかった.当該自生地におけるサギソウ種子の発芽は3月下旬から始まった.4月下旬には発芽可能な種子の大部分が発芽し,プロトコームへの菌の感染が始まった.5月下旬には発芽したプロトコームの大部分に菌が感染した.5月下旬から7月上旬までの異なる時期に菌根菌接種サギソウプロトコームを自生地に設置して,その後の生育状況を調査したところ,5月下旬から6月中旬に設置したプロトコームの生育が良好となった.これらのことから,当該自生地へのプロトコーム設置時期は5月下旬から6月中旬頃が適すると考えられた.