抄録
実サンショウの高価格販売には,ハウス栽培による早期出荷が有効である.しかし,一般的に他家受粉を必要とする作物のハウス栽培では単位面積当たりの収量を増加させるために,人工受粉技術を確立する必要がある.人工受粉での結果率を高めるためには,発芽率の高い花粉を用いる必要があり,受粉に用いる花粉の発芽能力を知るための好適な培地条件を明らかにする必要がある.そこで,開花初期および盛期の新鮮花粉を用いて,ショ糖濃度およびホウ酸濃度の異なる寒天培地上における花粉発芽率を求めるとともに花粉管長を測定し,好適な培養温度も検討した.その結果,2%寒天培地上での開花初期および盛期の花粉発芽率は,培地のショ糖濃度がそれぞれ15%および15~20%で高く,両時期の花粉ともに花粉管長はショ糖濃度が15~25%で比較的優れた.培養温度は両時期の花粉ともに30℃で発芽率が高くなり,花粉管長は開花初期および盛期の花粉でそれぞれ20~30℃および15~35℃で比較的優れた.また,20%のショ糖を含む2%寒天培地に100~1000 ppm濃度のホウ酸を添加した結果,花粉発芽および花粉管長が促進された.