園芸学研究
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発育制御
カキ果実の成熟に及ぼすジャスモン酸とサリチル酸処理の影響
高橋 郁夫永田 雅靖名田 和義平塚 伸
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キーワード: エチレン, 活性酸素種,
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2008 年 7 巻 2 号 p. 255-260

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抄録
植物界に広く分布し,新規植物ホルモンとして注目されているジャスモン酸と,エチレンや活性酸素種の代謝に関与するとされるサリチル酸が,カキ‘富有’果実の成熟に及ぼす影響を知る目的で実験を行った.ジャスモン酸メチル(MeJA),サリチル酸(SA),エスレルおよび過酸化水素(H2O2)溶液を果実に処理し,着色,落果および収穫時の果肉硬度を調査した結果,H2O2は強く着色を促進し,MeJAとSAも促進効果を示したが,エスレルの効果は認められなかった.また,MeJAとSA処理果では,収穫時の果皮中のリコピン含量が高く,クロロフィル含量が低かった.H2O2とエスレル処理は,激しい落果を誘発して収穫時の果肉硬度も有意に低下させたが,MeJA 500 ppm区での落果はほとんど観察されず,果肉硬度の低下も認められなかった.MeJA処理は果実からのエチレン放出量を増大し,SA処理はエチレン放出時期を早めた.このように,MeJAとSAは内生エチレンと活性酸素種の生産を通じてカキ果実の成熟に関与していると推察され,MeJAはカキ果実の着色促進剤として利用できる可能性がある.
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© 2008 園芸学会
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