園芸学研究
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栽培管理・作型
リンゴの自家不和合性打破剤のニホンナシに対する効果の検証
平塚 伸堀川 晃宏名田 和義伊藤 寿大野 秀一三井 友宏加田 弘
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キーワード: 果実品質, 重金属塩, S-RNase
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2009 年 8 巻 4 号 p. 469-473

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抄録

リンゴのS-RNase活性抑制による自家不和合性打破剤として開発された2種類のApple plus(No. 4およびNo. 6)について,ニホンナシ‘幸水’に対する効果を検討した.まず,‘幸水’の花柱タンパク質を調製し,そのRNase活性抑制に及ぼすApple plusの影響を調査した. Apple plus No. 4およびNo. 6は濃度依存的にRNase活性を抑制し,No. 4は0.1%,No. 6は1%添加で活性は半分程度にまで低下した.次に,両薬剤の自家受粉区の‘幸水’に対する着果促進効果を検討した. 開花0,1および2日前にNo. 4とNo. 6を0.1または0.5%で処理した結果,2週間後の着果率は20~100%と著しい着果促進効果があった.ただし,この時点での着果率は無受粉区で最も高かったことから,自家受粉区での着果も単為結果である可能性が高いと考えられた.このように,Apple plusには単為結果誘発作用もあることが示唆された.受粉後4週目における着果率はいずれも10~40%を示し,十分な着果促進効果が確認された.最も効果の高かった処理時期は開花1日前で,40%近くの着果率を示し,No. 4の効果が高かった.一方,果実肥大は全般的に劣っており,成熟期における果重は他家受粉果の70%程度であった.また,果実内の完全種子数も他家受粉果が2~7個だったのに対し,自家受粉果では0~3個と少なく,十分に不和合性が打破されなかったことを示した.

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© 2009 園芸学会
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