抄録
近年,健康機能性などでカキ果実から得るタンニンが注目を集めている.現在カキのタンニンは,“柿渋”として,専用果実から,およそ3年かけて伝統的な製法で生産されている.これに対し,ごく短時間でタンニンの抽出が可能な新しい抽出方法を開発し,その抽出条件を検討した.カキ‘刀根早生’の未熟果実と成熟果実を脱渋後粉砕して遠心分離すると,3ないし4の画分が得られた.未熟果実の第3画分と成熟果実の第2画分を凍結乾燥後,水中に分散させてから121℃で15分加熱したところ,大量のタンニンが抽出された.抽出量は,最大で果実重あたり2%程度となった.0.1 N塩酸で抽出すると最も効率よく抽出されたが,水でも加熱時間を延ばすことにより,同程度の抽出が可能であった.果実の収穫からタンニンの抽出までに要する時間は,およそ8日間であった.