日本ヘルスサポート学会年報
Online ISSN : 2188-2924
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『経済・財政と暮らしの指標「見える化」データ集』を活用した都道府県別一人当たり医療費に関連する要因のマクロ分析の一例
松田 晋哉槙島 美佐子藤野 善久
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2018 年 3 巻 p. 27-34

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抄録

 内閣府の『経済・財政と暮らしの指標「見える化」データ集』に掲載されている「地方財政分野」、「社会保障分野」、「社会基盤分野」、「文教分野」、「暮らしの指標」、「人口指標」、「経済指標」の都道府県別集約データを用いて、一人当たり医療費に関連する要因の分析をパスモデルによって行った。データ数が少ないため満足のいく適合度のモデルは作成できなかったが、以下のような興味ある知見が得られた。 1)医療費に与える提供側の要因としては医師数よりも病床数の影響が大きく、また外来受療率よりは入院受療率の影響が大きい。したがって、医療費適正化の観点からは、現在進めている地域医療構想に基づく機能分化と配分の見直しが重要な政策課題となる。 2)高齢者の社会参加は医療の利用に負の影響を持っており、また健康に対する関心も高齢者の社会参加を通して間接的に医療の利用を抑制することが示唆された。このことは、就業促進などの高齢者の社会参加施策が医療費の適正化策からも有効であることを示唆している。 3)高齢化の医療費に対する影響は、高齢化のレベルよりはその増加率が大きいことが示唆された。増加率は老人福祉施設定数のような介護施策で代表される『代替政策』と負の関係にあり、したがって医療費適正化の観点からは高齢者の増加率の高い都市部で、介護サービスなどの代替政策の充実が必要であることが示唆される。

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