抄録
本稿は、保健分野において提唱されてきたコミュニティ・ミーティング(CM)というレンズを通して、北海道江差町において試みられている「まちづくりカフェ」によるソーシャル・キャピタルの形成過程を検討し、今後の課題を整理した。
まちづくりカフェは、地域の身近な生活課題について話し合いながら互助による解決策を考えるワークショップによって、住民同士がエンパワメントしていくプロセスであり、ソーシャル・キャピタルの形成に寄与している。ただ、CM は、住民の「生活実感」、思い、疑問をもとに合意形成/対話の場として機能し、最終的には行政への政策提案まで想定されているが、まちづくりカフェでは、住民に主体的な意識を持ってもらいながら互助活動を展開していくことに力点が置かれ、政策提案までには至っていない。今後は、まちづくりカフェに参加する住民が互助体制を構想・計画しつつ、必要な施策を行政に提案する力量を形成していくことが期待される。