抄録
目的:本研究は、限界集落で暮らす住民自身の高齢者を支援するパワーと、生活継続にとって不安な状況のひとつである高齢期ひとり暮らし時(「元気な時」、「他者の世話が必要になった時」)の永住希望との関連を明らかにすることを目的とする。対象と方法:限界集落A県B市C町で生活する20歳以上の住民すべてを対象に、配票留置法によるアンケート調査を行った。結果:強制投入法による二項ロジスティック回帰分析の結果、「地域住民の高齢者支援パワー尺度(SPES)」の下位尺度である「地域の高齢者福祉に対する影響力意識」の得点が高い場合、「元気な時」「他者の世話が必要になった時」ともに、有意に永住希望を持ちやすくなる可能性が示唆された。考察:「地域の高齢者福祉への影響力意識」が高い地域住民の場合、その地域住民は永住希望を持ちやすくなり、地域住民の高齢者を支援するパワーを高めるアプローチは、限界集落への永住を選択できる可能性を高めることが示唆されている。元気な状態であっても、他者の世話が必要な状態であっても、自分自身が地域の高齢者福祉をよりよいものにする力を持っているという意識を持つことができれば、地域での生活継続を希望できる可能性が高まる。