2016 年 23 巻 1 号 p. 15-23
目的:DV被害経験を有する移住外国人女性における生活背景の分析により、複合的課題を把握するとともに、移住外国人女性への支援のあり方を検討する。
方法:外国人支援機関における外国人女性の相談データ 119ケースに対し、クロス集計及びロジスティック回帰分析により、DV被害経験を有する移住外国人女性の生活背景や属性の分析を行った。また、移住外国人女性 2名へのインタビュー調査を行い、経験した困難や得たサポートについて聞き取りを行った。
結果:分析を行った対象者のうち、DV被害を有する外国人女性は 119名中 59名(49.6%)であった。「配偶者国籍」「在留資格」「就業」「経済困窮」「児童虐待」に有意差が認められ、「年齢」「来日年数」「最終学歴」に有意傾向が認められた。DV被害経験を有する女性において「配偶者が日本人」「児童虐待問題を有する」「最終学歴が小・中学校」が有意に関連していた。インタビュー調査では、経済的脆弱性、母国・日本人家族によるサポートの欠如と社会参加の困難、養育問題等が女性の複合的課題を形成していたことが示された。結論:DV被害を経験する移住外国人女性においては、経済的な脆弱性や夫・夫家族との関係における軋轢、養育問題、そして社会生活力の獲得に必要な社会参加の機会からの疎外といった多層的な問題が複合的課題を形成している。日本人との家族形成が移住外国人女性のDV被害への脆弱性を緩和するとは限らないことも踏まえ、日本語教育の提供に加え女性のネットワーク拡大、そして社会生活知識の獲得を促進する支援が重要である。