日本保健福祉学会誌
Online ISSN : 2424-0036
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研究ノート
働く母親の自己効力感、ワーク・エンゲイジメント、リカバリー経験の関連
伊草 綾香関 美雪上原 美子延原 弘章
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2021 年 28 巻 1 号 p. 15-25

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抄録

目的:働く母親の育児支援にリカバリー経験の概念を導入するための予備的検討を行うことを目的として、働く母親のワーク・エンゲイジメント、リカバリー経験、自己効力感の相互の関連を検討した。

方法:対象は関東地方 A市内の認可保育所に乳幼児を通園させている母親 1,702名とし、無記名自記式質問紙調査を実施した。ワーク・エンゲイジメント、リカバリー経験、自己効力感の測定には既存の尺度を用い、構造方程式モデリングによりこれらの尺度間の関連を検討した。

結果:回収数 653通、有効回答数 570通(有効回収率 33.5%)であった。母親の平均年齢は 35.6歳、標準偏差は 4.8歳であった。3尺度間相互の関連を仮定したパス図により構造方程式モデリングを行ったところ、適合度は概ね良好であった。3尺度の間に有意な正の関連が見られたものの、ワーク・エンゲイジメントとリカバリー経験、リカバリー経験と自己効力感の間の関連はごく弱いものであった。

結論:働く母親の育児支援にリカバリー経験の概念を導入することの意義は一定程度確認できたが、現行のリカバリー経験尺度は一般的な労働者を対象として作成されたものであるため、働く母親のリカバリー経験は適切に測定できなかった可能性がある。今後、働く母親のリカバリー経験を適切に測定し、仕事と育児で消耗した心理社会的資源の回復を総合的に評価する方法を検討していく必要がある。

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