抄録
前報において,著者らは企業の研究開発 (R&D) が抱える3つの課題;「R&Dプロセスと事業戦略の乖離解消」,「R&Dプロセスの開発促進」および「R&Dプロセスの革新創出能力の向上」を挙げ,これらの課題の解決策としてR&Dプロセスにバランス・スコアカードを適用した.さらに「顧客満足のためのR&Dプログラム」と「業務プロセス革新のためのR&Dプログラム」を協働させる「マルチプログラム・プラットフォーム構造」を提案した.本稿では,顧客価値の協創に重要な役割を果たす「マルチプログラム・プラットフォーム構造」に焦点をあて,その構造がもつ顧客価値の協創メカニズムの解明を試みた.その結果を基に,スーパープログラム「顧客価値協創プログラム」が「顧客満足のためのR&Dプログラム」と「業務プロセス革新のためのR&Dプログラム」をマネジメントする顧客の価値協創メカニズムはR&Dプロセスにとって重要な構造であることを示した.