抄録
ODA(政府開発援助)事業におけるプログラム・アプローチの有効性は、本学会で繰り返し論じられてきた。本論文では、こうした議論を踏まえ、その実証的な方法論にP2M理論を導入し考察する。その第1の手順は、過去に実施された2つの成功事例であるODA事業群を選択しプログラムと見立て、その全体統合管理が、制約資源のもとで全体調和と相乗効果に有効性を発揮するとの仮説である。本論ではJICA報告書によるボリビアにおける水供給分野とベトナムの運輸セクターの成功事例を選定する。第2の手順は、共通する有効性要因の探求である。いずれの選択事例でも、P2Mのプログラムデザイン、関係性マネジメントに優れたマネジメントに有効性要因が評価され、確認された。第3の手順は、P2M理論から実践への有効性管理要因のフィードバックである。こうした管理要因は「グッドプラクティス」が支配的な影響要因であり、ODA事業における有効性の高い管理手法を特定した管理手法メニューを提案する。その概要は、プログラムのライフサイクルに合わせた、実践的なデザインのあり方、実施中の関係性マネジメントの充実、実施後の持続性・自立発展性強化のための仕組みづくりである。