抄録
情報システム開発の受注型のプロジェクトは、ソフトウェアを含めた成果物を委託者に引継ぐ。本研究では、情報システム開発を受託する大企業に所属する8名のプロジェクト・マネジャー(PM)に対して、引継ぎの実態をインタビュー調査した。その結果、PMは引継ぎのために、委託者のプログラムを意識して、成果物だけではなく、開発において蓄積した知識を引継ぐ能力を求められることが明らかになった。それは、委託者の情報システムに対する要件を認識し、開発のプロジェクトにおいて取得した知識を、委託者を介し、運用担当に引継ぐ委託者のプログラムを意識した引継ぎの能力である。しかし、引継ぎに必要とされる受託者のPMの能力を具体的に示しているプロジェクト標準やスキル基準は少ない。そのため、本論文では、引継ぎの能力を段階的に向上させることを示した「情報システム開発におけるPMの引継ぎ能力モデル」を提案する。