企業の神経系と位置付けられるICTシステムは、激しく変化する経営環境に対して、企業戦略を迅速に実現することが求められるようになってきた。最近のICTシステム構築プロジェクトは、既存システムの改修が多く、開発の規模や追加する機能が多様化しているため、企画段階でQCDを直感的に判断することは難しくなっている。受注者のSI企業は多重請負構造のため、プロジェクトを成功させるためには、多様な価値観を持つ企業の関係者をコントロールする強いリーダーシップが必要になっている。本論文では、D.Besankoの創出価値モデルを多重請負構造に適用して、SI企業の観点からプロジェクトを成功させるための要件を考察し、価値創造活動におけるリーダーの役割について論じる。SI企業のプログラムマネジャーには、顧客企業の戦略実現と自社の生産性向上の調和を図るというプレッシャーがかかる。発注者と受注者の戦略が異なる場合には、両者のトップの適切な関与が重要となる。