2015 年 9 巻 2 号 p. 203-220
企業にとってR&Dプロセスは,事業活動のための「価値」と,事業活動における「持続可能性」を創出する重要なプロセスである.しかしながら,今日,グローバル化や多様化によって,事業活動における不確実性が高まっており,R&Dプロセスをスムーズに事業活動へつなげ,さらに事業活動を「成功」にまで結び付けることは非常に難しい課題となっている.この解決のため、本研究では3つの課題、R&Dプロセスと事業戦略との乖離の解消、R&Dプロセスの開発スピードアップ,R&Dプロセスのイノベーション創出能力アップを挙げている。これらの課題を解決する多角的視点を得るためバランスト・スコアカード(BSC)を適用し,R&Dプログラムと他のプログラム(顧客満足プログラム,内部ビジネスプロセス革新プログラム)の関係を考察することで,「顧客視点からの研究プログラム」と「内部プロセス視点からの研究プログラム」をコラボレーションさせるマルチプログラムプラットフォーム構造を提案した.またBSCの戦略マップによって,企業内で共有できる価値をつくり出す仕掛けとしての「場」が,顧客価値の共創に重要な役割を果たすことを提案した.