抄録
一世代前の1980年代において,マクロで捉えて情報化投資に対して生産性が高まっていないことを示唆する,いわゆるソローの生産性パラドクスは有名である.これをミクロ的に捉え,21世紀における現代企業の情報技術に基づくインフラストラクチャについて事例を交えて考察していく.対象とする情報インフラストラクチャは,競争優位な独自のビジネスモデルを有する企業の大規模かつ複雑な基幹システムである.このような企業において,なぜ投資額も高額となり,リスクも高いような情報技術プロジェクトを行うのか.なぜ高額投資のリターンとして生産性パラドクスを引き起こすのか,というメカニズムを,プロジェクト&プログラムマネジメントの視点で考察する.