抄録
ODA(政府開発援助)事業におけるプロジェクト・マネジメントに関しては、P2M 手法の個別のマネジメント手法の観点から、本学会でも複数の成功事例が紹介され、分析されている。本論文では、こうした議論を踏まえ、有効性があり、より普遍性の高い ODA プロジェクト・マネジメントの方法論作成に P2M 理論を導入し考察した。その第 1 の手順としては、JICA の調査団により客観的に評価された「ミャンマー児童中心型教育強化プロジェクト」「フィリピン共和国 ムスリム・ミンダナオ自治区 人材育成プロジェクト」の 2 つの成功事例を選定した。第 2 の手順は、共通する有効性要因の探求である。いずれの選択事例でも、P2M の「タイムマネジメント」に優れた有効性要因が確認された。第 3 の手順は、P2M 理論から実践への有効性管理要因のフィードバックである。その概要は、1) モニタリングシートを活用した異なるレベルでの適切な頻度でのモニタリングの実施、2) 異常事態・問題点を迅速に認知しチーム内で協議するコミュニケーション文化の醸成、3) プロジェクト目標達成のために必要な計画の変更をいとわない柔軟な対応である。