印度學佛教學研究
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ニカーヤが伝承する十支縁起成道記事の問題点
天野 信
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キーワード: 縁起成道記事, 仏伝, 過去仏
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2007 年 56 巻 1 号 p. 323-319

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抄録

初期仏教文献(阿含・ニカーヤ,律蔵等)には,ブッダ成道の前後に行われた縁起説観察を記す資料(以下「縁起成道記事」)が複数存在するが,それらは,内容・形態に異同があることから,縁起説やブッダの伝記(以下「仏伝」)の展開を考察するうえで重視されてきた.本稿では,パーリ聖典が伝承する縁起成道記事について調査・検討する.特に,Samyuttanikaya X II. 65 nagara (SN. II pp.104-107.以下「パーリ城邑経」)とMahapadanasuttanta (DN.14, DN II pp.1-54.以下MAP)が伝承する十支縁起成道記事に着目し,この記事が,パーリ律などが伝承する十二支縁起成道記事に先行する形態の成道記事であることを確認したうえで,パーリ上座部では,古形の縁起成道記事が,仏伝ではなく,過去仏の伝記に組み込まれ伝承されたことと,十支縁起成道記事が過去仏思想を前提として成立した可能性を指摘する.

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© 2007 日本印度学仏教学会
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