印度學佛教學研究
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devayana-, brahmayana-, mahayana-
笠松 直
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2013 年 61 巻 3 号 p. 1066-1072

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抄録

Vedic devayana-, pitryana- (RV+)はpantha-, m.「道」に係り,「神々(ないし祖霊)が進み行く」道を謂う形容詞である.五火二道説の文脈にも現れ,思想史的にも注目される重要語彙である.この2語と,仏教文献に見られるBHS buddhayana-「仏乗」, mahayana-「大乗」等との語構成上の類似は,しばしば注意されてきた.しかしこれら一連の仏教文献にみられる複合語は中性の実体詞(Tp.)であって,文法的に別個の構成を採っている:前者はRV以来在証される形容詞yana-「(〜へ)進み行く」を基礎とし,後者はVeda文献から在証される中性実体詞「乗り物」を基礎とする.この際,Pali文献における幾つかの用例は示唆的である.Sn 139 devayana-は「神々の乗り物」を意味するものと考えられる.同様にSN V 5,11 brahmam...yanam及び16 brahmayana-は,「バラモンの乗り物」を意味しよう(但し「バラモンらしい行き方(進み方)」の可能性は否定できない).BHSでも事情は同様で,通例Symplex yana-は「乗り物」を意味し,例えばbauddham yanamは「仏陀の乗り物」を意味しよう.同様にbodhisattvayana-, sravakayana-, etc.も「菩薩(乃至声聞)の乗り物」(ないし「菩薩(乃至声聞)の行き方」)であろう.

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© 2013 日本印度学仏教学会
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