印度學佛教學研究
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Madhva派にとってのVaisesika多元論に関する一考察
―― Jayatirtha作Tattvaprakasika, Vaisesika批判部に見られる問題――
池端 惟人
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2014 年 62 巻 3 号 p. 1151-1155

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抄録

Madhva(1238-1317)は別異論(Dvaita)を提唱したことで他のVedanta学派と区別される.彼が説く<五つの別>(pra-panca)には,Brahmanに同一視されるVisnuと他の個我・物質との別だけでなく,非精神的事物(jada)相互の別も数えられる.この点において,Vaisesikaの説く多元的実在論はDvaitaにとって完全な否定対象たり得ないはずである.それを示唆するかのように,Madhva派の学匠,Jayatirtha (1365-1388)は,MadhvaのBrahmasutra註への複註Tattvaprakasika中,Vaisesika批判部において,<Visnuの美質の無限性>という特別な目的を設定している.<世界の原因>に関する諸学説を否定する最中,他の箇所と明確に異なる,このような目的改変を行った背景には,Madhva派とVaisesika説との同類性,すなわち,主宰神を動力因(nimittakarana)と考える近接性があると考えられる.しかしながらVaisesika説の考える主宰神には現実的・論理的限界があることも彼らは察していた.同じく主宰神動力因説を認めながらも,Vaisesikaの立てる有限の主宰神に,すべての不可能を可能にする属性を<上乗せ>することで,真の世界原因たらしめる.これこそが<世界の原因>をめぐる一連の議論の中で唐突に<神の能力の無限性>を議題とした理由と考えられる.

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© 2014 日本印度学仏教学会
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