印度學佛教學研究
Online ISSN : 1884-0051
Print ISSN : 0019-4344
ISSN-L : 0019-4344
アシュヴァメーダ本祭のための動物リスト
――その原型およびヤジュルヴェーダ諸サンヒターにおける発展――
手嶋 英貴
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 64 巻 3 号 p. 1043-1052

詳細
抄録

古代より強力な王が行ってきた祭式アシュヴァメーダ(馬犠牲祭)では,主要な犠牲獣である馬に加え,多数の動物が多様な神格に献じられる.そこで用いられる個々の動物は,奉献対象となる神格名とともにリスト化され,ヤジュルヴェーダ諸派のサンヒターに収録されている.これらの動物たちは「全ての生物」(sarvani bhutani)を表象しており,アシュヴァメーダ挙行の主目標である「全て(sarva-)の獲得」を実現するための重要な要素となっている.つまり,全ての生物を神々に献じることで,王は人間界だけでなく生物界全体への支配力を獲得するのである.上述の目的にふさわしく,各サンヒターが列挙する動物は家畜(gramya-)と野生動物(aranya-)の双方にわたる.これらを示すテキストは,アシュヴァメーダ伝承の中でも重要箇所の一つと言ってよいが,これまで文献間の相違点やテキスト形成の過程については十分に検討されてこなかった.本論文では,こうした研究上の欠落を補うため,現存する4リストの内容を比較対照表の形に整理し,それに拠りながら各リストのテキスト形成史について検討を行った.

著者関連情報
© 2016 日本印度学仏教学会
次の記事
feedback
Top