印度學佛教學研究
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ジャイナ教在家信者はいかなる条件のもとでsallekhanaが認められるのか?
堀田 和義
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2016 年 64 巻 3 号 p. 1119-1124

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抄録

ジャイナ教にはsallekhanaと呼ばれる死に至る断食があり,古くから在家信者によっても実践されてきた.このsallekhanaは自殺と見なされることもあったため,ジャイナ教は繰り返しその相違を強調してきた.本稿は,在家信者の行動規範を扱うシュラーヴァカ・アーチャーラ文献の記述を通して,sallekhanaが認められる条件を検討する.最初にsallekhanaの語形に焦点を当てる.空衣派のサンスクリット文献はsallekhana, sallekha, sallekhana, sulekhana, sallesanaを,白衣派はsamlekhanaを用いる.空衣派のプラークリット文献もsallehana, sallihana, sallekhanaを,白衣派はsamlehanaを用いることから,Tattvarthasutraの特徴として指摘されてきた宗派による前綴りの音の違いが他の文献にも当てはまることを明らかにする.次に,sallekhanaの位置付けを確認する.文献の中にはsallekhanaを学習戒に含めるもの,含めることなく説明するもの,その説明に一章を割いて詳述するものなどがあり,sallekhanaの実践は義務とまでは言えなくとも,熱心な者には推奨されてきたことを示す.最後に,sallekhanaの実践が認められる条件を検討する.sallekhanaが認められる条件としては災難,飢饉,老齢,不治の病の4つが核であり,「死期が近付いた時」「ダルマのため」などの文言はそれらを緩やかに包括すること,また4つの条件は必要に応じて減らされ,最少の場合にはそれらすべてを含む「死期が近付いた時」という表現になることを明らかにする.

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© 2016 日本印度学仏教学会
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