印度學佛教學研究
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『菩薩地』における修行階位について
VO Thi Van Anh
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2017 年 65 巻 3 号 p. 1250-1255

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抄録

大乗仏教の修行階位は,従来,基本的に『十地経』に説かれる十階位であると理解されている.しかし,初期瑜伽行派の修道階位は,特に『菩薩地』の段階ではそのように断言できない.その根拠は,同文献における修行階位に「住品」の階位と「地品」の階位の二種類があるからである.

さらにまた,周知のように,修行階位の内どれが重要な階位かという点に関して,瑜伽行派は初地を重要とするが,『十地経』が重要とするのは初地ではない.なぜ瑜伽行派が初地を重要な階位・聖位とするのかという疑問を解明するには,『菩薩地』の修行階位を考察すべきである.本稿で考察した結果,同文献における階位説について,「住品」と「地品」との二者の内,「地品」の七地説が主流であると言える.またその七地説の内,初地に対応する浄勝意楽地(śuddhādhyāśaya-bhūmi)という階位の位置づけに注目し,凡夫から聖者になるという意味を有する浄勝意楽地の特異性から,修行者にとって,初地,すなわち聖者になる最初の階位が重要視されるものであると知られる.これによって,なぜ瑜伽行派は初地を重要とするのかが理解でき,初期同学派の修行階位の確立の一背景を明示でき‍た.

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© 2017 日本印度学仏教学会
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