印度學佛教學研究
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インドラは太陽神か?
天野 恭子
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キーワード: Veda, Yajurveda, Indra, sun, Sun God
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2022 年 70 巻 3 号 p. 1039-1044

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抄録

 ヴェーダの宗教において広く崇拝されているインドラ神は,最古の祭式解釈の書である黒ヤジュルヴェーダ・サンヒターにおいて,ヴリトラ退治を行う戦いの神とされる一方で,太陽としての表象も併せ持つ.しかしインドラと太陽の同置は用例が少なく,一般化していたとも言えない.本稿ではインドラが太陽との関連の中で述べられる用例を,黒ヤジュルヴェーダ・サンヒター(マイトラーヤニー・サンヒター,カータカ・サンヒター,タイッティリーヤ・サンヒター)の祭式解釈や神話から拾い集めて考察した.

 その結果,太陽を「21番目のもの」であるとする表象が,インドラと太陽を繋いでいることが見えてくる.そして「21番目の太陽」が登場する文脈を考察すると,長期間の修行的祭式によっていくつもの世界を越えて最高天に昇ることを目指すサットラの思想が背景にあることがわかる.より古いアタルヴァヴェーダには,サットラによって到達する最高の境地を,インドラが象徴していることを示す讃歌が見られる.ある意味異端的とされ正統的バラモン文化に覆い隠されていたヴラーティア/サットラ文化の脈流が,アタルヴァヴェーダから黒ヤジュルヴェーダに受け継がれていたことが理解される.

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© 2022 日本印度学仏教学会
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