印度學佛教學研究
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複数の修辞手法の1詩節における共存――アランカーラに関するショーバーカラミトラの論述――
趙 世弘
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2022 年 70 巻 3 号 p. 1053-1056

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抄録

 12世紀後半にカシミール地方で活躍した修辞学者ショーバーカラミトラは,自身の著作である『修辞の宝蔵』(アランカーラ・ラトナーカラ)において,修辞手法の共存という文脈でアランカーラとサンスリシュティとサンカラと三つの項目の関係に注目した.彼によると,一文における主たる修辞手法はアランカーラと名付けられ,補助にあたる他の修辞手法はサンカラと名付けられる.一方,彼はサンスリシュティを修辞手法と認めない.彼によると,実際のところ,全ての修辞手法は他の修辞手法と結合して例文に現れ,単一で使われることはない.上述の観点は彼の学術的な対論者であるルッヤカ(12世紀前半)の観点とは鋭く対立している.

 アランカーラという名称については,例文に存在するだけでアランカーラと呼ばれる場合と,別種の輝き(vicchittyantara)に見えても主たる修辞手法の地位が損なわれない場合がある.第二の場合は,他の修辞手法の影が主たるものと混合する場合(chāyāsaṃkara)と,別種の表現法となる場合(bhaṅgyantarābhidhāna)との,二種の状況が存在する.最後にショーバーカラミトラは,アランカーラという術語は修飾されるもの,つまりラサ(rasa)を想定しているが,チトラはそれを想定しないとして,チトラとアランカーラとの区別を提示する.

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© 2022 日本印度学仏教学会
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