印度學佛教學研究
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Dīpaṃkaraśrījñānaによる2つのHayagrīvasādhanaについて
望月 海慧
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2022 年 70 巻 3 号 p. 1173-1180

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抄録

 チベット大蔵経には,Dīpaṃkaraśrījñānaに帰せられる33の成就法文献が収められている.その中にはHayagrīva を対象とする2つの成就法がある.すなわち,散文で書かれたĀryahayagrīvasādhana (D. no. 3057, P. no. 3881) と,韻文で書かれたŚrīhayagrīvasādhana (D. no. 3058, P. no. 3082) とであり,いずれも短い著作である.彼の他の著作におけるHayagrīva への言及は,Guhyasamājalokeśvarasādhana (D. no. 1892, Pi 229a, P. 2756, Thi 273a6)に一箇所見られるだけなので,彼自身にとってHayagrīva はそれほど重要な尊格ではなかったと言える.しかしながら,彼の名前が添えられたHayagrīva の図像が複数報告されていることから,彼の伝統に帰せられるHayagrīvaの図像がチベットにおいて広く伝えられていたことも確認できる.

 2つの成就法については,その構成は概ね成就法の基本的構成に基づいている.ただし,散文のものは,成就法の目的となる具体的効果について,複数のヴァリエーションを列挙していることから,単純なマニュアルではなく,解説的内容も伴うものである.また,Hayagrīva の身体的特徴については,着衣や飾りの共通点はあるものの,散文では三面六臂,偈文では三面四臂とことなっている.このことは彼自身がHayagrīva に対して確定したイメージを持っていなかったことと,両者が著された時期が異なることを示している.

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© 2022 日本印度学仏教学会
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