印度學佛教學研究
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Mahayanasutralamkara における幻喩の二つの側面
松田 訓典
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2006 年 54 巻 3 号 p. 1192-1196

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抄録

Mahayanasutralamkara (MSA,『大乗荘厳経論』) 第XI章に説かれる幻 (maya) の喩えは, 同論書の三性説の論述に関して主要な役割を担うものであるが, 本論文ではそれに対する諸註釈, さらに当該論書と同じく初期瑜伽行派に属する諸文献, 特にMSAと思想的関連の深い Madhyantavibbaga における幻喩の用例を含めて詳細に再検討する. その結果として以下のことが指摘できる.
MSA においては, maya に (a)「迷乱の根拠」という側面と, (b) 顕現はしているがその通りには存在しないものという側面が見られる.
その中でも (a) の観点を取り入れる解釈はMSAに特徴的であると言える.
同時にMSAは (b) の観点からも abhutaparikalpa を位置づけているが, この解釈の方が初期瑜伽行派におけるより一般的な理解であって, 註釈家たちもMSAの表現を尊重しながらこちらに沿った形で, 統一的に解釈しようとしたと考えられる.

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