シャイヴァシッダーンタ研究は, シヴァ教の聖典である所謂アーガマの内容に拠って教学を展開した, サドヨージュヨーティスからアゴーラシヴァに至る理論家たちのサンスクリット語文献の研究と, 南インドに展開したシヴァ教のタミル語を中心とした諸文献の研究との二系統で行われてきたが, 近年これら両文献群がどのような関係にあったかを解明することが研究課題として浮上している. しかし, この関係の解明を課題として設定することは, タミル・シャイヴァシッダーンタの実態解明がほとんど進んでいない現状にあっては, 難しいと言わざるを得ない. タミル・シャイヴァシッダーンタの研究は, 19世紀から続けられてきたにも拘らず, 13世紀頃の理論を体系的に捉えて様々に解釈することにこだわり続けてきたため, 理論発展の歴史の解明が関心の外にあり, 研究の期間と分量に比して成果が乏しい状況となっているのである.
本稿では, タミル・シャイヴァシッダーンタの理論が決して固定的でなかったことに触れつつ, これまでのタミル・シャイヴァシッダーンタの研究を, それぞれの研究目的によって分類し, 問題点を指摘する. それにより, 今後の研究が, タミル・シャイヴァシッダーンタの動的な側面, すなわち理論発展の歴史を解明することを課題とすべきことが明らかになるであろう.