抄録
本稿は、1999年から2008年度における民間放送局の経営状況について、『日本民間放送年鑑』に記載された公表資料をもとに、現時点(2011年12月)での tentative な考察をまとめるものである。言い換えれば、デジタル化への移行前の過程における特質を抽出することが本稿の意義である。現状のまとめとして、売上高および利益については減少傾向にあり、赤字を計上する放送局が増加傾向であるが、マクロ的環境の変化が極めて急激ではない限りは、財務体質的には対応可能ともいえ、危険な状況とはいえないことが導かれた。しかしながら、データ制約下での考察となることに注意されたい。よって、今後、放送事業を取り巻く諸環境の変化やより直近かつ詳細なデータの利用により、本稿における現時点での分析結果に修正が必要となることも容易に想定されうる。