抄録
情報通信技術の発展における効果の1つとして障害者の就業環境の向上が挙げられているが、実際には技術の恩恵を享受しやすい情報通信業において、障害者の実雇用率は著しく低迷している。本研究ではこの点を問題意識として、製造業と情報通信業の労働者を対象としたWebアンケート調査を実施した。
分析結果からは、業種間での労働者の障害者雇用に関する情報の認知に差異は確認できなかったが、特に障害者の雇用を認知していない中小規模の情報通信業の労働者において、直接の雇用ではなく社会保障での解決を望む意識が有意に高いことが確認できた。一方で、障害者の雇用を認知している中小規模の情報通信業の労働者では在宅勤務(テレワーク)の活用に関して積極的な態度が見られた。
本研究の結論として、長期の障害者雇用率低迷により意識の格差が固定化される懸念があること、業種や企業規模の差異を踏まえたアプローチが必要であることが挙げられる。