抄録
プライバシー権の提唱国である米国では、消費者プライバシー保護に向けた取組が行われる一方で、2001年9月11日の同時多発テロ以降、国家安全のためにプライバシーを犠牲にする傾向が顕著である。今日では、プライバシー権の理念すら希薄化しているとも考えられる。
他方、欧州では、個人データ保護は基本的権利であるとの考えに立脚し、データ保護分野における国際的な立場を強化する態度を見せている。
日本では、2013年9月より、「パーソナルデータに関する検討会」が設置され、第三者機関設置等に向けた検討が進められてきた。2013年12月20日には、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部において、「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」が決定された。今後、日本は、国際的な情報発信力や交渉力を高めていくべきであるが、その際に、個人情報保護法制の根底に存在するプライバシー権の捉え方について、法改正を見据えた上で、考えておく必要がある。
以上の問題意識に基づき、本稿では、2013年6月に米国で関係者と意見交換を行った結果等をもとに、プライバシーに関する米国の現在の考え方を整理し、日本におけるプライバシー権の捉え方を提示することとした。