抄録
大正七年九月著者は關西支部講演會に於て「單相發電機の發電子反作用と電壓波形」なる題目の下に正強波交流發電機及普通の交流發電機但し界磁の圓鑄形にして且つ葉鐵によりて構成せらるるものに就きて講演したのである(會誌第362號及第368號を見な)而して茲には正弦波交流發電機に關して其後の研究結果を發表するのである。
先づ二個の界磁を有する正弦發電機に關し其恒久的現象に就て基本方程式の純理論的解決を行ひ以て前講演に於て發表せし結果の誤りなき事を證し,次に正弦波發電機の實用的解决としては既記二個の界磁を有するものなりは一個の界磁のみを有するものの方が構造上に於て遙かに簡單なる事を示し次で正弦發電機に就て其短絡電流及電壓變動率の公式を與ふるのである。
次に基本方程式の完全なる解决を行ふ事に就て、負荷の突發的變化に伴ふ一時的電流の解式を求め、偖て其應用として突發的短絡電流の波形及其最大値を見出すのである。尚突發的短絡電流の解決に負荷の一般的變化を論ぜずとも直接に基本方程式なり算出せられ得ることを示し、又若も之等の正弦發電機が三相或は二相に捲線せらるゝなれば其一相に短絡を生ずる塲合に負荷なき他の二相に如何なる電壓が生ずるやた示すのである。
三相發電機及普通の單相發電機の理論は、編を改めて之を説述せん。著者の研究に依れば二個の界磁を有する正弦波交流發電機の恒久電流の解式が變壓器の其れと酷似し、又正弦發電機及三相發電機及普通の單相發電機の短絡に關し誘導電動機及變壓器に於て吾等技術家が常に親む所の6即ち1-1/vVf(但しv及Vfは發電子及界磁の磁氣漏洩係數)なる係數が交發流電機に於ても亦大に活用せらるべきものなることを知るのに頗る興味深き事柄である。