抄録
本論文は高壓架空配電線路に於ける配電電力と電線の太さとの最も經濟的なる關係を出來得る限り簡單なる曲線を以て示し實地線路設計者の机上の友として最も實用的なる設計の標凖を示すを以て目的とす。此目的に對し最初本論適用範圍なる名古屋市に於ける變電所及配電線路の實際電力供給状況殊に配電線に於ける供給電力に就ては其特性を詳細研究せり。次いで配電線路の器材及工賃標凖單價を示し尚當社營業状態として或資金を配電線路建設に投じたる投資に對し如何程の割合の年收入があれば當社として所定の配當をなし得るかを論ぜり。更に名古屋市に於ける最も普通の所謂高壓二回線架設の標凖配電線路構造に就き其一スパン當り固定資産及損失電力として會社が一ケ年間に如何程の費用を支出し居るかを求めん爲め電線以外の聰ての固定資産及電線一式の固定資産(但低壓線損失電力を含む)及高壓線損失電力の三項目に分ち各別に毎年支出費用を算定し之を合して一般式の形にせり。次に此一般式は電力を夜間電燈、書夜間動力及書夜間電燈動力の三種の供給電力に區別し又電力原價を2 KWH當り2錢及2錢5厘及3錢の三種に區別し出來得る限り簡單なる形の式とせり次いで配電線の先端に新しく或需用負荷が要求せられたる場合又は線路途中に於ける場合分布負荷が其輸送電力に對し比較的小なる如き普通のFeederの場合に於て其供給電力に對し如何なる太さの電線を使用すれば最も經濟的なるかを示す一般式を求めたり。即之は或所定電力を送るとして其電線路一スパン當り毎年支出費用の最も小なる如き電線の太さを求めるなり。次いで全く同様の方法を以て高壓一回線乘り及三回線乘りの電線路に對し最も經濟的なる電線の太さを求めたり。最後にかくして求めたる最も經濟的なる負荷及電線太さの關係は電壓降下即電壓調整の方面より見ても殆んど差支へなきものなる事を論じ結局外線工事設計者は所定負荷に對しては簡單なる曲線に依り最も經濟的なる電線の太さを選定すれば宜しき事を述べたり。(註、本論所説は講演のものと幾分順序を變更し又追加削除の條項あり)